
解答・解説を見る
■ 正解
4, 5
■ 構造の読み取りと確認試験の狙い
提示された化学構造は、チアゾール環・シアノ基(–CN)・塩素(–Cl)・硫黄(S)を含み、
さらに「及び鏡像異性体」とあることから、不斉炭素をもつキラル医薬品であることが分かる。
確認試験では、構造中の特徴元素(S, Cl など)や官能基に対応した反応が選ばれているかどうかがポイントになる。
■ 各選択肢の検討
● 1 本品に塩酸を加えて加熱した液は、亜硝酸ナトリウム試液、アミド硫酸アンモニウム試液を加えた後、N,N-ジエチル-N′-1-ナフチルエチレンジアミンシュウ酸塩試液を加えると赤紫色を呈する。(誤)
この操作は、芳香族第一級アミンのジアゾ化・カップリング反応に基づく確認試験である。
塩酸酸性下で芳香族 –NH2をジアゾ化し、その後カップリングして有色物質(赤紫色など)を生じる。
しかし、提示構造には芳香族第一級アミノ基は存在しない。
したがって、この反応を確認試験として用いるのは不適切であり、誤りとなる。
● 2 本品を直火で加熱するとき、紫色のガスを発生する。(誤)
直火加熱で紫色のガスを発生する典型例は、ヨウ素(I)を含む化合物である。
ヨウ素は加熱により I2 として昇華し、紫色の蒸気を生じる。
提示構造にはヨウ素原子は含まれていないため、このような現象は起こらない。
よって、この記述は誤りである。
● 3 本品の水溶液にニンヒドリン試液を加え、水浴中で加熱するとき、液は紫色を呈する。(誤)
ニンヒドリン反応は、主にα-アミノ酸や遊離アミノ基の検出に用いられ、
アミノ基をもつ化合物がルーエマン紫(紫色)を呈する。
提示構造には、ニンヒドリン反応の対象となるような遊離の –NH2(特に α-アミノ基)は存在しない。
したがって、この確認試験は構造と対応せず、誤りである。
● 4 本品に水酸化ナトリウムを加え、徐々に加熱して融解し、炭化する。冷後、希塩酸を加えるとき、発生するガスは潤した酢酸鉛(II)紙を黒変する。(正)
これはナトロン融解による硫黄の検出に相当する操作である。
硫黄を含む化合物をNaOH とともに加熱融解すると、硫化物(Na2S など)が生成する。
その後、冷却して希塩酸を加えると、
Na2S + 2 HCl → 2 NaCl + H2S↑
のように硫化水素(H2S)が発生する。
H2S は潤した酢酸鉛(II)紙と反応して硫化鉛(PbS)を生じ、紙を黒変させる。
提示構造には硫黄原子(S)が含まれており、この確認試験は構造の特徴と一致する。
したがって、この記述は正しい。
● 5 本品につき、酸化銅を皮膜した銅網につけて燃焼させる試験を行うとき、緑色を呈する。(正)
これはベイルシュタイン試験と呼ばれる、ハロゲン(特に塩素)検出の古典的試験である。
銅線(酸化銅皮膜付き)に試料を付着させて炎中で燃焼させると、ハロゲン化銅が生成し、
炎が緑色を呈する。
提示構造には塩素原子(–Cl)が含まれており、ハロゲン検出試験として極めて妥当である。
したがって、この記述は正しい。
■ まとめ
- 構造の特徴:S(硫黄)、Cl(塩素)、CN、チアゾール環、鏡像異性体
- 1:芳香族第一級アミンのジアゾ化・カップリング → 構造に該当せず(誤)
- 2:ヨウ素含有化合物の確認(紫色ガス)→ I を含まず(誤)
- 3:ニンヒドリン反応(遊離アミノ基)→ 該当官能基なし(誤)
- 4:ナトロン融解+酢酸鉛紙黒変 → 硫黄検出、構造に S あり(正)
- 5:ベイルシュタイン試験 → ハロゲン(Cl)検出、構造に Cl あり(正)
- よって正しいのは4, 5。
