問 94 電解質のモル伝導率に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 モル伝導率は、電気伝導率をモル濃度(mol/m3)で割ったものである。
2 NaCl のモル伝導率は、NaOH のモル伝導率よりも大きい。
3 モル伝導率を濃度の平方根に対してプロットし、濃度ゼロへ外挿したときの切
片の値は極限モル伝導率を表す。
4 モル伝導率を濃度の平方根に対してプロットしたとき、希薄溶液では直線関係
が成立する法則をデバイ・ヒュッケルの極限則という。
5 H+ の極限モル伝導率が K+ より大きいのは、H+ のイオン半径が K+ のイオン半
径より小さいことによるものである。
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■ 正解
1, 3
■ モル伝導率の定義
電解質溶液の電気伝導率(比伝導率)を \(\kappa\)、
電解質のモル濃度を \(c\)(単位:mol/m3)とすると、
モル伝導率 \(\Lambda_m\) は次式で定義される:
\[ \Lambda_m = \frac{\kappa}{c} \]
単位は SI では \(\mathrm{S \cdot m^2 \cdot mol^{-1}}\) となる。
■ 各選択肢の検討
● 1:モル伝導率は、電気伝導率をモル濃度(mol/m3)で割ったものである。(正)
定義そのもの: \[ \Lambda_m = \frac{\kappa}{c} \] であり、電気伝導率をモル濃度で割った量がモル伝導率である。 したがって正しい。
● 2:NaCl のモル伝導率は、NaOH のモル伝導率よりも大きい。(誤)
極限モル伝導率は、イオンごとの寄与の和で決まる(Kohlrausch の独立移動の法則)。
一般に
\[
\Lambda_m^\circ(\mathrm{NaOH}) = \lambda^\circ_{\mathrm{Na^+}} + \lambda^\circ_{\mathrm{OH^-}}
\]
\[
\Lambda_m^\circ(\mathrm{NaCl}) = \lambda^\circ_{\mathrm{Na^+}} + \lambda^\circ_{\mathrm{Cl^-}}
\]
となり、\(\lambda^\circ_{\mathrm{OH^-}} > \lambda^\circ_{\mathrm{Cl^-}}\) であるため、
NaOH の方が NaCl よりモル伝導率は大きい。
よって本記述は誤り。
● 3:モル伝導率を濃度の平方根に対してプロットし、濃度ゼロへ外挿したときの切片の値は極限モル伝導率を表す。(正)
強電解質では Kohlrausch の式:
\[
\Lambda_m = \Lambda_m^\circ – K\sqrt{c}
\]
が成り立つ(希薄溶液)。
\(\Lambda_m\) を \(\sqrt{c}\) に対してプロットすると直線となり、
\(\sqrt{c} \to 0\) へ外挿したときの切片が \(\Lambda_m^\circ\)(極限モル伝導率) である。
したがって本記述は正しい。
● 4:モル伝導率を濃度の平方根に対してプロットしたとき、希薄溶液では直線関係が成立する法則をデバイ・ヒュッケルの極限則という。(誤)
\(\Lambda_m\) と \(\sqrt{c}\) の直線関係は「Kohlrausch の法則」であり、 デバイ・ヒュッケルの極限則は「平均イオン活量係数」に関する法則である。 したがって名称が誤り。
● 5:H+ の極限モル伝導率が K+ より大きいのは、H+ のイオン半径が K+ のイオン半径より小さいことによるものである。(誤)
H+ の極限モル伝導率が極めて大きい主因は、Grotthuss 機構(プロトンホッピング)による特異的な移動様式であり、 単純な「イオン半径の大小」だけでは説明できない。 したがってこの記述は誤り。
■ まとめ
- モル伝導率:\(\Lambda_m = \kappa / c\)(定義) → 選択肢 1 正
- 強電解質:\(\Lambda_m = \Lambda_m^\circ – K\sqrt{c}\)、外挿切片が極限モル伝導率 → 選択肢 3 正
- NaOH の方が NaCl よりモル伝導率は大きい → 2 は誤
- 名称は「Kohlrausch の法則」であり、デバイ・ヒュッケル極限則ではない → 4 は誤
- H+ の高い伝導率は主に Grotthuss 機構による → 5 は誤
