第109回薬剤師国家試験 問103 矢印機構どおりに実際に進行する反応の判定

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■ 正解
4


■ 問題の本質(電子移動矢印が“現実の反応機構”として妥当か)

5つの反応機構(1〜5)が、矢印で電子移動を示している。 問われているのは、

  • その矢印の向き・電子の出発点と到達点が正しいか
  • 既知の反応機構として妥当か
  • 中間体・生成物が現実的か

という観点で、「実際にその機構どおりに進行して生成物が得られるもの」を 1 つ選ぶ問題。


■ 各選択肢の検証

● 1 C–H 結合から Br へ直接電子が飛ぶ機構(誤)
描かれている矢印は、

  • C–H 結合の電子対がそのまま Br に向かって移動している

しかし、通常のイオン機構では、

  • C–H 結合が求核剤のように振る舞うことはない
  • このような「C–H → Br」の矢印は不自然

→ 実際の反応機構として成立しない。


● 2 カルベン(CCl₂)付加の機構(誤)
シクロヘキセンに CCl₂ が付加してシクロプロパン様構造を与える反応自体は「カルベン付加」として知られているが、

  • 提示された矢印はカルベン生成・付加の電子の流れが不適切
  • 電子の出発点・到達点が実際の機構と合っていない

→ 矢印機構としては誤りであり、「この矢印どおりに進行する」とは言えない。


● 3 BH₃ のヒドロホウ素化機構(誤)
アルケン+BH₃ → オルガノボラン、というヒドロホウ素化反応自体は正しいが、

  • BH₃ は電子不足で求電子的に振る舞う
  • 提示された矢印は、電子の流れが逆向きになっている部分がある

→ 電子移動矢印として正しい機構になっておらず、「この矢印どおりに進む」とは言えない。


● 4 アルケンへの Br₂ 付加(正)
描かれている機構は:

  • アルケンの π 電子が Br₂ を攻撃 → ブロモニウムイオン形成
  • 生成した Br⁻ が背面攻撃 → 1,2-ジブロモ化合物生成

という、教科書的なハロゲン付加反応の正しい機構である。

  • 電子の出発点・到達点が妥当
  • 中間体(ブロモニウムイオン)も現実的
  • 実際にこの矢印どおりに反応が進行して生成物が得られる

→ 本問で唯一、「矢印機構がそのまま現実の反応機構として成立している」選択肢。


● 5 芳香族カルボン酸誘導体からプロピレンオキシドと酸が出る機構(誤)
5 では、芳香族カルボン酸クロリド様部分とイソプロピル基から、

  • プロピレンオキシド
  • 4-クロロ安息香酸

が生じるような矢印が描かれている。

しかし、

  • この構造からそのまま内部 SN2 的にエポキシドが生成し、同時にカルボン酸が遊離するという機構は不自然
  • アシル–O 結合の切れ方・電子の流れが、既知のエポキシド生成機構(過酸によるエポキシ化など)と一致しない

→ 矢印機構として妥当とは言えず、「この矢印どおりに進行する反応」とは認められない。


■ まとめ

  • 1:C–H → Br の矢印が不自然で、実際の機構として成立しない。
  • 2:カルベン付加自体はあるが、矢印の電子移動が誤っている。
  • 3:ヒドロホウ素化自体はあるが、電子の流れの描き方が不正確。
  • 4:ブロモニウムイオンを経る Br₂ 付加機構として完全に妥当(正)。
  • 5:エポキシド+カルボン酸生成の矢印機構が不自然で、既知機構と合わない。

矢印機構どおりに実際に進行して生成物が得られるのは 4 のみ

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