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■ 正解
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■ 問題の本質(電子移動矢印が“現実の反応機構”として妥当か)
5つの反応機構(1〜5)が、矢印で電子移動を示している。 問われているのは、
- その矢印の向き・電子の出発点と到達点が正しいか
- 既知の反応機構として妥当か
- 中間体・生成物が現実的か
という観点で、「実際にその機構どおりに進行して生成物が得られるもの」を 1 つ選ぶ問題。
■ 各選択肢の検証
● 1 C–H 結合から Br へ直接電子が飛ぶ機構(誤)
描かれている矢印は、
- C–H 結合の電子対がそのまま Br に向かって移動している
しかし、通常のイオン機構では、
- C–H 結合が求核剤のように振る舞うことはない
- このような「C–H → Br」の矢印は不自然
→ 実際の反応機構として成立しない。
● 2 カルベン(CCl₂)付加の機構(誤)
シクロヘキセンに CCl₂ が付加してシクロプロパン様構造を与える反応自体は「カルベン付加」として知られているが、
- 提示された矢印はカルベン生成・付加の電子の流れが不適切
- 電子の出発点・到達点が実際の機構と合っていない
→ 矢印機構としては誤りであり、「この矢印どおりに進行する」とは言えない。
● 3 BH₃ のヒドロホウ素化機構(誤)
アルケン+BH₃ → オルガノボラン、というヒドロホウ素化反応自体は正しいが、
- BH₃ は電子不足で求電子的に振る舞う
- 提示された矢印は、電子の流れが逆向きになっている部分がある
→ 電子移動矢印として正しい機構になっておらず、「この矢印どおりに進む」とは言えない。
● 4 アルケンへの Br₂ 付加(正)
描かれている機構は:
- アルケンの π 電子が Br₂ を攻撃 → ブロモニウムイオン形成
- 生成した Br⁻ が背面攻撃 → 1,2-ジブロモ化合物生成
という、教科書的なハロゲン付加反応の正しい機構である。
- 電子の出発点・到達点が妥当
- 中間体(ブロモニウムイオン)も現実的
- 実際にこの矢印どおりに反応が進行して生成物が得られる
→ 本問で唯一、「矢印機構がそのまま現実の反応機構として成立している」選択肢。
● 5 芳香族カルボン酸誘導体からプロピレンオキシドと酸が出る機構(誤)
5 では、芳香族カルボン酸クロリド様部分とイソプロピル基から、
- プロピレンオキシド
- 4-クロロ安息香酸
が生じるような矢印が描かれている。
しかし、
- この構造からそのまま内部 SN2 的にエポキシドが生成し、同時にカルボン酸が遊離するという機構は不自然
- アシル–O 結合の切れ方・電子の流れが、既知のエポキシド生成機構(過酸によるエポキシ化など)と一致しない
→ 矢印機構として妥当とは言えず、「この矢印どおりに進行する反応」とは認められない。
■ まとめ
- 1:C–H → Br の矢印が不自然で、実際の機構として成立しない。
- 2:カルベン付加自体はあるが、矢印の電子移動が誤っている。
- 3:ヒドロホウ素化自体はあるが、電子の流れの描き方が不正確。
- 4:ブロモニウムイオンを経る Br₂ 付加機構として完全に妥当(正)。
- 5:エポキシド+カルボン酸生成の矢印機構が不自然で、既知機構と合わない。
→ 矢印機構どおりに実際に進行して生成物が得られるのは 4 のみ